0102:FF11小説『Intermisson VIII』

ごめん。ノータイトルだわw

強いて言うなら、別に結婚なんて枠にとらわれなくてもイイジャン。とか、
そういうことを言いたいのだと思うのだけれど、FF11小説ジャナイ感が半端ないっす。

まぁ、最近真面目に忙しくって、文章書いている間も無く、
指先が錆び付いてそうだったので、ちょっとリハビリ的に書いてみました。

鳥さんと龍さんがお好きな方はゼヒに。


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「おい、女」
「なによ、鳥」
 ただ奴の流儀に合わせて返答しただけなのに、心手折られたようにヤグードが蹲る。
 普段から、いかにも自分は興味ないけれど、仕方がないから付き合ってやってる風な態度を貫くくせに、こっちが同じ態度を取ってみせると根元からぼっきり折られたかのように消沈してしまうのは勝手だなと思う反面、ちょっと可愛いと思ってしまうから止められない。
「と、唐突ではあるが――」
 だが、この日は違った。
 精神が傷付いて――傷付けたのは、言うまでもなく私だが――満身創痍になりながらも、奴は、ズー・ブシュは更に一歩踏み出してきた。
「アンタが唐突じゃなかったことは非常に稀だと思うの」
「いいから聞くのだ」
「はいはい。何ですか」
 どうせまたコルシュシュが獣人支配に落ちてヤグードチェリーとブブリムグレープが、とか、同レベルのつまらない話だろう。そう決め付けて、傾けた私の耳に思いも寄らぬ言葉が舞い込んできた。
「我と婚礼の儀を交わすがいい」
 ぶふぅ――ッ!
 シャララトにアルザビコーヒーの黒い飛沫が舞う。汚いぞと注意されながらも気管に入ったそれを追い出すことは叶わない。平和だった茶屋は今この時を以って終わりを告げる。
 嗚呼、どうせならマムージャでもトロールでもラミアでもいいから攻めて来てくれれば良かったのに。


「トォォォォォォォォォリィィィィィィィィィィィィィィ……」
 地獄よりも更に深淵の唸り声を上げながら、ひとりの好青年がシャララトに入ってきた。
 なんというタイミングの良さ。いや、悪さ。
 慣れたもので、それを見届けたシャララトの店員たちは火を消したり、食器をしまうなどの簡単な処置をした後、速やかに店を出て行ってしまった。巻き添えを恐れたためだ。しかも最近、この店で自分たち三人以外の客を見たことがない。正直どうかと思っている。
「フ、真龍よ――」
 この後の展開は読めた。
 ズー・ブシュは自身の正当化のため、独自の理論を展開し、それにセルが怒り狂って取っ組み合いの喧嘩が始まる。あとは、雑草の一本すら残らない。アルザビ皇宮に勤める知人のガルカ族によれば、今やビシージよりも問題視されている事案らしい。
 だが、
「貴様の言い分は分かるぞ」
「……なんだと?」
 セルの心情も慮ったようなズー・ブシュの言い方にセルものっそりとしたその歩みを止めた。
「我とて何も無条件にこの女と婚礼を謳っているつもりはない。我は我なりに貴様のことは分かっているつもりだ」
「ズー・ブシュ……」
 少し感動した。あのズー・ブシュの口から他人を思いやれるような言葉が飛び出してくる日が来るなんて。その他人の定義の中になんだかプロポーズを受けているらしい自分のことが含まれていなさそうなところが若干気になるが、ここは友人として、パートナーのひとりとして、彼の厳かな言葉を拝聴すべきだろう。
「そこでだ。我は考えたのだ」
「ほう」
「過去の遺恨は流し、我らは共通の目的のため手を取り合うべきだ。具体的に言うと、多夫一妻――」
「死ねええええええええええええええええぇぇぇぇッ!」
 腰の管楽器を握り締める。こんなときもあろうかと、アルザビウーツ鋼を砕いてまぶした特別製のホルンだ。音色なんて期待していない。あくまで投擲武器としての代物だ。オートマトン技師ガッサドの特注だった。
 だが、大きく振りかぶったその腕を止めたのは、意外にもセルだった。
「シヴィ、落ち着いてくれ!」
「落ち着けるかこんなの! うちの人権的に!」
「そうだな。シヴィの言うことももっともだ。鳥よ――」
 溜め息混じりにズー・ブシュを見やり、
「多夫一妻制なんて種の繁栄という観点からすれば非効率極まりないんだぞ?」
 などと、非常に残念なことを言い放った。
 背筋に空恐ろしいものが走って、掴まれた腕を振り解く。長く付き合ってるせいか、この見た目文句なしの美青年も口を開けば残念だと感じることが前よりは多くなった。
「つーか、うちは人間! アンタたちは獣人と真龍! 子供なんて出来ないのッ!」
「何を言うか。我は諦めておらん」
「諦めろっつうのッ!」
 しれっと、言い放つズー・ブシュに、控えめに、その点に関しては、俺も。などと呟くセル。
 本当に信じられない。
「女よ。落ち着いて聞くのだ」
「アンタらがくだらないこと言うからじゃん!」
「我も貴様の適齢期というのを憂慮してだな――」
「黙れッ!」
「むう。では、貴様はどうすれば良いというのだ」
「どうもせんでいいわッ!」
 あくまで、真剣に悩み始めるズー・ブシュ。最初はこちら側だったセルまで、いつの間にか奴の傍で頭を捻り始めていた。
 なんなのだろう。あのふたり、いつから仲良くなったのだろう。


 怒りも冷めやらぬまま、どすどすとモグハウスに帰ると、ポストに一通の封書が届いていた。
 一ヵ月後、ウィンダスで行われる結婚式の招待状だった。形式ばった文言の最後には、とあるタルタル族と逆さ読みの彼女の名前が連名で記載されている。
(へぇ……)
 中央大陸に帰った後も上手くやっていたらしい。
 喜ばしいと思うと同時、どこか寂しいと感じるのと、羨ましいと感じるのと、色んな気持ちがない交ぜになってこみ上げてくる。
 しばらくはタイムピースに刻まれるだけの静寂の時が過ぎて――
「……どうするんだよ。お前のせいだぞ。徹底的に怒らせてしまったじゃないか」
「何を言うか真龍。貴様も概ね同意だったのだろう」
「う、それは……」
「うむ。事を急いてしまったか……タルタルとラミアが上手くいったのだから、我らとて上手くいくと思ったのだが」
 背を預けたモグハウスの扉の向こうから馴染みあるふたりの会話が聞こえてきた。
 なるほど。一足先にこの招待状を見たから、ズー・ブシュの奴、訳の分からない暴走を始めたのか。
「いやぁ。まぁ、そもそも彼らとは決定的に違う点があるということを忘れていたよな。俺たち」
「ほう。その違いとは?」
「シヴィは別に俺たちのこと、何とも思ってないだろ?」
「なに――ッ!」
 扉越しゆえ、その表情は見て取れないが、まるで思いもしなかった、初耳だといわんばかりのズー・ブシュの悲鳴が聞こえた。
「それは……ほ、本当なのか?」
「……自分で言ってて悲しいけれど、彼女に気があると信じて疑わないお前が気の毒だ。俺は」
「最近、我が覚えた人間の言葉の中にツンドラとかいうものがあってな――」
「寒そうだな。合ってるのか間違ってるのか知らないけど」
「あと、人間には気になる異性を己の意思とは関係なしに苛めてしまうという特殊な性癖があるとか――」
 背を預けたままずるずるとその場に座り込み、知人の結婚式の招待状を眺めながらふたりの会話に耳を傾ける。自分には、あのふたりが何に対して気を揉んでいるのかさっぱり分からなかったからだ。でも、次のズー・ブシュの言葉で、ちょっと照れくさくて、信じられないけれど、それが分かったような気がした。
「ここ最近、我は考えるのだ」
「何を」
「人間の――人間の女の幸せとは何だろう、と」
「……壮大だな」
「うむ、壮大である」
「俺たちには根本的に足りない部分だよなー。やはり漏れ聞く人間の価値観と照らし合わせると、愛する男と一緒になって、暖かい家庭を築くこと、とか……?」
(あははは。何言ってんだろ、あのふたり)
 それはとても一般的で、広く流布するメジャーな価値観だったりするかもしれないけれど、別にそれだけが全てではないだろうに。そういうことって、わざわざ教えるまでもないと思っていたし、第一、自分にそれだけじゃないといえるほどの経験もないので言うに言えない面もある。
「うむ、普遍的であるな。別にあの女が我のものであれば、どこか他の人間の男と引っ付こうが、子供を成そうが、全然構わないのだが――」
「いや、そりゃあお互い色々無理だろ」
「そうだろうか」
「冷静に考えて、だ。昼間は俺たちと旅をしていても、夜には帰る場所があって、誰か知らない人間の男と暮らしているなんて、お前、我のものとか言えるのか?」
 しばしの沈黙の後、ズー・ブシュの悶絶した声が響く。
「……おおぉぉぉ。虫唾が走る。その男に羽根吹雪など見舞ってやりたくなる」
「お前はぬるいよ。俺だったらスパイクフレイルだ。うちのシヴィは誰にもやれんな」
 恋人役が駄目なら今度は保護者面か。忙しい男たちだ。
「とにかく。なんとなく女のモグハウスの前まで足を運んでしまったわけだが」
「まぁ、あの調子だと真っ直ぐ帰ったとは思えないよなー……」
「待ってみるか」
「そうだな……屋台でシシケバブ買い食いしてそうだし」
(してないわよ)
 気付けば。
 いつしか自分の頬が緩んでいることに気がついた。
 一寸は不快な気分になったのは確かだし、今日はこのままで終わらせてしまおうと思うけれど、でも、明日は普通に過ごせそうな気がする。扉の傍から立ち上がると、今日は早めに休むことを決意した。


 その深夜。
「だから、我はあの女をどこにも嫁にはやれんと言っておるのだよ――ッ!」
「だが、鳥よ。それは俺たちの度量が問われるところだ。最初っから全てを否定するのは――」
「真龍よ。いい加減、身の振り方というものを考えたほうがいいぞ。貴様が自爆してくれるのは勝手だが、いつまでもいい人ぶるのは貴様の不利益にしかならん。偽善者が」
「なんだとテメ、人が大人しく下手に出てりゃあ――」
「やかましいわッ! 人ん家の前で延々語ってないでさっさと寝ろ! つーか、酒くさッ!」
 きっと、人間と獣人と真龍の価値観の隙間を埋めることは出来る。
 でも、それもまだまだ先のことかもしれない。目の下に隈を作りながら、シヴィはそう思った。

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